現代社会は物質設計によって支えられています。シュレーディンガー方程式を解いて物質中の電子の運動を設計することにより、今日の半導体産業は目覚ましい成功をおさめました。しかしながら、この成功は電子間の相関を無視した一体問題に限られています。一方、現実の物質の広大無辺の可能性を生かすには物質中の様々な自由度の間の相関、多体相関を考えなければなりません。この多体相関の設計、すなわち量子創発現象の設計学の構築ができれば物質科学の可能性は飛躍的に広がり、社会に対して大きなインパクトが与えられると期待されます。
本領域では、狙った量子創発現象を実現する物質の特定、合成、測定を途切れなく行うスキーム、相関設計学の構築を目指します。最大の目標としては新しいクラスの物質群、現象を見つけたいと思っています。特に応用分野への波及効果があり、かつ物性物理学における新概念を育む舞台となる物質を探索します。高温、強磁場、擾乱(じょうらん)などに耐える頑健物質、超巨大応答、超高速応答を示す特異応答物質、新法則、新原理、新現象発見の揺籃地となりうる揺籠物質をターゲットとします。
領域代表・有田 亮太郎
(東京大学・大学院理学系研究科・教授)