本研究では、狙った量子創発現象を実現する物質の特定、合成、測定を途切れなく行うスキーム、相関設計学の構築のため、下記の6班が新しい融合研究を推進します。
[A01班:スピン相関が拓く創発物性]
量子物質中の電子の持つスピン自由度に着眼し、スピン相関の設計による新しい磁性体の創成および物性現象の開拓に取り組みます。理論による概念創出・モデル計算・物質設計から、実験による物質合成・精密測定を密接な連携のもと行うことにより、量子物質中の電子が持つスピン自由度が関与する相関がもたらす新しい創発物性を開拓し、頑健・特異応答・揺籠物質の具現化を図ります。
[A02班:量子金属における創発現象の相関設計]
金属電子系は、伝導電子間の量子多体効果により創発する様々な「量子相」の宝庫です。伝導電子の存在により電荷・スピン・熱を運ぶ輸送現象や、不確定性原理が本質な量子相転移や超伝導が実現します。本研究では幾何学的フラストレーションやモアレ構造、準周期構造などの新機軸を持ちこみ、電子相関と協奏させることで、複数の対称性(時間・空間・回転など)を同時に破った新規な量子相を設計し実現させます。
[A03班:エキゾチック超伝導体の相関設計]
3次元超伝導体の研究と1,2次元人工量子系の研究を統合し、従来の超伝導体にはない基礎概念を実現する「エキゾチック超伝導体」の相関設計学を推進します。超伝導研究に新しい内部自由度を導入することで揺籃的なエキゾチック超伝導体を設計し、実験的に実証します。さらに、光や電流を用いた超伝導体の動的制御法を確立し、未知の超伝導相を実現させます。
[B01班:トポロジカル物性の設計と創成]
物質中のバンドトポロジーと相互作用の協奏がもたらす新しいタイプの磁性や超伝導、非平衡現象の創発の可能性を追求し、これらの相関設計を理論主導で進めるとともに、従来の理論体系では予測できなかった量子創発現象の発見・検証や、従来の実験では実現しえなかったエキゾチック頑健物質の設計・創成を目指します。
[B02班:非平衡・非線形が導く創発物性]
理論と実験を両輪とし、磁性体・超伝導体・トポロジカル物質などにおいて、平衡系では実現しない非平衡量子創発現象の予言と発見を目指します。年々向上する計算機パワーや機械学習・量子計算の新手法を背景に理論グループが非平衡量子相を定量的に予測し、それを実験グループが参照して観測します。特に、高度に制御された光により、非平衡超伝導、身近な元素による磁化反転、省電力な磁気スキルミオンの操作などの非平衡現象を実現し、特異な巨大非線形応答や頑健な機能性を開拓します。
[B03班:データ駆動と計算科学で加速する物質設計]
理論モデルによる予測を実際の物質へと繋げるため、非経験的第一原理計算手法およびデータ駆動型科学基盤を開発します。これにより、各班が提案する創発物性を具体化する頑健物質・特異応答物質・揺籠物質の探索を効率的に進め、相関設計学の構築に貢献します。